プロ作曲家が語る【和風BGMとAIの未来】
1. 導入:AI進化の波とプロ作曲家としての現在地
近年、AI技術の進歩は著しく、音楽制作の分野においても例外ではありません。私自身、プロの作曲家として自身の曲を2000曲以上制作・公表し続けていますが、その経験から見ても、AIによる音楽生成は無視できないレベルに達しています。
特に私が専門とする和風BGMの分野では、AIはどのような立ち位置にあるのでしょうか?本記事では、実際にAIによる和風BGMを1000曲以上生成してきた私の経験に基づき、AIの脅威と可能性、そしてプロの作曲家が今後どこを目指すべきかについて、具体的な考察を交えて解説します。
2. Suno AIなどに代表される和風BGMの驚異的な進化
AIによる和風BGMの生成能力は、今や**「アマチュアクラスをはるかに超えた」と言っても過言ではありません。人間が制作すれば少なくとも半日はかかるであろう楽曲を、AIはわずか数秒**で吐き出してきます。このスピードと量産性は、まず最大の脅威です。
AIが「得意」とする和風BGMの分野
実際に生成を繰り返す中で、AIが特に高い完成度を見せるのは以下のジャンルです。
- 和風EDMやテンポの良いBGM: リズムトラックと三味線や尺八のフレーズを組み合わせる構成が得意で、楽曲の構成やミックスを含めて「そこそこ」のクオリティを短時間で実現します。
- 静かで情緒的なBGM: お琴や笛などを使い、空間エフェクト(リバーブや空間ディレイ)を駆使した静かな環境音的な楽曲も非常にうまく生成します。
AIが「苦手」とする分野
一方で、音質自体はやはり既存の高級なプラグイン(例:Sonicaの三味線プラグインや尺八音源)を使った人間の制作物に断然劣ります。楽器の扱いが不自然に聞こえる部分もあり、特に微細なニュアンスや演奏の「間」の表現は、人間の感性には及びません。
3. 【プロの視点】本当に脅威を感じているのは誰か?
「AIが作曲家を駆逐する」という論調はよく聞かれますが、私は別の見方をしています。
私が思うに、今、最も脅威を感じているのは、CubaseやLogic ProなどのDTM専門ソフトウェアの開発者側ではないでしょうか。
AI BGM生成サイトは、既に驚異的なレベルで「音符を打たずに」音楽を生成しています。今後、既存のDTMソフトウェアがAI機能を強化し、ほとんど楽器を弾かずに指令だけで簡単に曲を作らせる構造になったとしても、**AI専門の音楽生成サイト(Sunoなど)**のスピードとシンプルさに勝てるでしょうか。
逆に、AI BGM生成サイトが、CubaseやLogicのような自由度の高い設定システムを取り入れ始めたら、音楽制作の風景は一変します。この先の技術競争は非常に見ものだと考えています。
4. AIの進化が変える、プロの価値基準 ⚖️
音楽制作の技術が進化するにつれて、プロとアマチュアの境界線は常に変化してきました。AIの登場は、この変化をかつてないスピードで加速させています。
かつては、高価な機材と専門的な知識、そして長い制作時間が必要だった楽曲制作が、AIによって**「誰でも」「数秒で」「低コスト」**で実現できるようになりました。
この変化は、プロの作曲家が今まで担ってきた「技術力」や「制作スピード」といった役割の価値を相対的に下げてしまうことを意味します。誰もが簡単に曲を作れるようになった今、これまでプロだけが持っていた技術は、以前ほどの希少性を持たなくなってきているのです。
私は、このAIの進化を否定するのではなく、この変化を受け入れるべきだと考えています。「AIにできること」と「人間にしかできないこと」を明確に見極めることが重要です。AIができることはAIに任せ、プロの作曲家は、**キャリアと感性に裏打ちされた独自の「独創性」**という、AIには到達し得ない価値を追求するべきなのです。
5. まとめ:AI時代に作曲家が目指すもの
現段階で、AIは人間が作る和風BGMのクオリティにほぼ近づいており、作品によってはAIの方が優れていると感じることもあります。しかし、どれだけAIが進化しても、現時点では**「人間が持つキャリアや感性によって生み出される独創性」**という部分で人間側に分があります。
いずれはその領域もAIがクリアしてくるかもしれませんが、だからこそ、プロの作曲家は常に一歩先を行く必要があります。私の長いキャリアで培った知識と技術は、AIの限界を超えるためのものです。
私は、自分の作品を作りながら、またAIを利用しながら、もっと面白く、人間だからこそ作れる作品を追求していきます。
AIには作れない、あなたの求める唯一無二の和風BGMを。
複雑なオーダーや、AIでは到達し得ないクオリティの和風BGMをお求めの方は、ぜひ私にご相談ください。お問い合わせは、私の作曲に関する専用ホームページからいつでも承っております。
それでは今回はこの辺で、お話を終わりにします。