和風BGMという言葉は一見シンプルだが、その背後には数えきれないほどのジャンル、楽器編成、歴史背景、演奏技法が存在する。
しかし現代では、その複雑な世界が一度“テンプレ化”されてしまい、どの楽曲も似た構成になりつつある。
この状況を最も正確に理解し、量産できるのがAIである。
ここでは、AI時代における和風BGMの再定義、そしてAIには作れない“本物の和の表現”とは何かを専門的に整理して解説していく。
和風BGM.jpとして専門性を強く示すための「核」になる内容だ。
AIが和風BGMを量産できる理由
現代の和風BGMの多くは、
・尺八の定番フレーズ
・琴のアルペジオ
・三味線の伴奏パターン
・和風スケール(陰音階・都節)
・ストリングスとの融合
といった“お決まりの構成”に依存している。
このテンプレート性は、AIにとって非常に解析しやすい。
そのため、AIは人間よりも速く、高い精度で「テンプレ化された和風BGM」を再現してしまう。
しかし、この量産能力は同時に重大な弱点も抱えている。
AIが苦手とする「本物の和の音」
和風BGMはギターサウンドと大きく異なる。
ギターは歪ませる、空間系を深くかける、エフェクトで大きく音色を変えるといった“脚色の余地”が非常に広い。
一方で、お琴や三味線は微妙なタッチ、弱音、ノイズ、間の取り方が命であり、エフェクトで誤魔化す余地が非常に少ない。
そのため、下記のような特徴を持つ音はAIが特に苦手とする。
- 微妙に揺れる倍音
- 弦を弾く一瞬のノイズ
- 指の動きによる音量変化
- 尺八の“息の震え”
- 篠笛の揺れすぎないビブラート
- 琴の余韻を殺さない繊細な減衰
AIは複合的な楽器が重なったとき、細部の粗が目立たなくなるため“それらしく”聞こえるが、
楽器単体で勝負すると一気にクオリティが破綻する。
これは現時点でのAIの限界だ。
原点回帰が生んだ新たな表現方法
筆者がたどり着いた結論は「原点回帰」である。
- 歌舞伎の長唄
- 三味線の伝統奏法
- 尺八本曲
- 篠笛の古典的フレーズ
- 大鼓・小鼓の掛け声(“イヤーッ”など)
- 空間を支配する“日本の間合い”
これらを徹底的に研究していくと、現代のテンプレ和風BGMには存在しない“失われた表現”が次々に見えてくる。
特に気づきが大きかったのは、
音数が少ないからこそ「響き」「余韻」「距離感」が非常に重要になるという点である。
和風BGMの生命線は「リバーブとディレイ」
和風BGMは音数が少ないため、一つひとつの音の扱いが作品全体の印象を大きく左右する。
筆者が特にこだわっているのは空間系の処理だ。
- 数十種類以上のリバーブを使い分ける
- 反響の“距離”をミリ単位で調整
- ディレイを極めて薄く重ね、空気感を作る
- リバーブ値が“数千単位”で変わるだけでイメージが激変する
AIは複雑な音楽を作る能力は高いが、
この“繊細な空気の調整”は最も苦手とする領域である。
そのため、テンプレ化された和風BGMは得意でも、
“人間が作るような極端にシンプルで美しい和の音”には到達できていない。
本物の和風BGMを作るには「楽器そのものへの理解」が必須
お琴、三味線、尺八、篠笛はそれぞれ
・構造
・演奏技法
・響きの方向性
が全く異なる。
ギター歴30年の筆者として感じるのは、
「楽器を弾き込んだ経験」があると、他の楽器でも“本質”が分かることが多いということだ。
プロミュージシャンの知人を見ていても、
複数の楽器をある程度高いレベルで弾ける理由はここにある。
和風BGM制作を追求する途中で、
“AIの限界は楽器の理解にある”
という事実に強く気づかされた。
今後の展望:AI時代だからこそ人間が輝く和の音へ
AIは和風BGMを高速に量産することができるが、
本来の和の音楽は「間合い」「余韻」「タッチ」という、数値化しづらい感覚の塊である。
だからこそ、
・本格的な和楽器の録音
・スタジオ環境の整備
・楽器そのものの収集
といった“生の音の追求”に向けて準備を整えている。
和風BGMは非常に広い世界であり、
単なるテンプレ音楽では語れない深さがある。
これからも、AIと人間の境界を探りながら、
より本質的で日本らしい音を追求していきたい。
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